頭鳴りについて
脳の中で、頭の周囲で聞こえる音を頭鳴りといいます。
頭鳴りはある日突然発症することがほとんどです。
頭鳴りはある日突然始まります。朝起きた時、テレビをみている時、ふと何かの拍子に音が気になります。気のせいだろうと思っていると、次の日もその次の日も音が鳴り続けます。
しばらくすると音が気になり、仕事や趣味が手につかず、夜も眠れなくなります。
耳鼻咽喉科を受診するも、聴力低下やめまいがないことから異常なしと診断を受け、脳神経外科を勧められMRIやCTで画像診断するもやはり異常なし、最終的に心療内科や精神科を受診し様々な診断名をつけてもらうといった流れになるでしょうか。
ここで不思議なことに頭の中で音が鳴るという症状は一般的にもあるのも関わらず、医療機関では気のせいで片付けられることがほとんどです。
耳鳴りとの違いが明確でなく、原因や症状が一定でないため治療が難しい症状です。
頭鳴りの原因
頭鳴りの原因には過覚醒、椎骨脳底動脈循環不全の2つが考えられます。
頭鳴りの原因①過覚醒
意識せとは無関係に働いている内臓や血管をコントロールする自律神経というものが人には備わっています。
過覚醒は自律神経(交感神経・副交感神経)のうち交感神経が副交感神経より常に優位になり続けている状態のこと言います。
頭鳴りの方は不眠や頭痛、感覚が過敏になる(音、光、匂い)に悩まされておられる場合があります。
頭鳴りが長期化すると音そのものがストレスになり、交感神経が亢進してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
頭鳴りの原因②血管性耳鳴り
血管性耳鳴りは脳の循環障害で引き起こされます。
椎骨と脳底部の循環不全は血管性耳鳴りの原因となる。
椎骨動脈、脳底動脈の循環不全が聴神経(内耳神経)に作用して頭鳴りを引き起こします。
血液の循環がきっかけの音のためザーザー、ゴーゴー音が多いようです。
また脳の循環障害なので頭鳴り以外にめまいや低音域の難聴、頭痛に悩まされておられる方が多くなります。
過覚醒と違い、原因がはっきりしており、柔道での衝撃や交通事故、動脈硬化、脳虚血発作が症状の背景にあるので投薬治療や手術といった選択肢もあり。
頭鳴りの改善方法
頭鳴りに対する東洋医学の考え方とツボの解説などをご紹介していきます。
頭鳴りのツボ①過覚醒
過覚醒の交感神経優位の状態を東洋医学では陰陽理論を元にして改善に導きます。
陰と陽が不釣り合いな状態を改善するために陰陽の平衡を整えるツボを使用することで自律神経のバランスを整えます。
膈兪(かくゆ)
膈兪の膈は隔てるという意味の漢字で胸と腹の境目を表すツボ。
膈兪は足太陽膀胱経の背部の経穴である。血気の集まるところである。膈兪は隔膜(横隔膜)と連絡していることから、膈兪と命名された。
上と下のバランスを整えるために使用するとツボで頭鳴りだけでなく他の自律神経のバランスが崩れた症状の改善にも使用できます。
太谿(たいけい)・崑崙(こんろん)
太谿は陰のツボ。崑崙は陽のツボ。
太谿は、内果の後ろに位置しており、陥凹の深いところにあることから太谿と命名された。 太谿は、足少陰脈の注ぐところで兪であり、兪土穴である。また陰経では、兪を以って原としているため、太谿は足少陰腎経の原穴でもある。 崑崙は外果の後ろの踵上部に位置しており、足太陽膀胱経の経火穴である。
この2つのツボのバランスを整えることで陰陽の平衡を図り頭鳴りや特に睡眠障害に有効です。
頭鳴りのツボ②循環障害
循環障害の場合は頭周辺の血液循環と脳温度の改善が重要だと考えています。
脳には血液循環と脳温度を一定に保つために、頭蓋骨の内と外を結ぶ導出静脈というがあります。
導出静脈とは、頭蓋内に開く孔を通じて頭蓋内の硬膜静脈と頭蓋外の頭皮の静脈を連絡している静脈である。
耳の後ろや頭の上、後ろに脳静脈を循環させる空洞があり、その空洞を姿勢の変化や体温が上昇した場合に外から内に血液を循環させて血液循環の改善や脳温を一定に保つのが導出静脈です。
導出静脈付近には針治療で使用されるツボはほとんどありません。
しかし本来ない場所のツボを奇穴や特殊穴と呼び一部の症状には特効的に効果があると伝わってきたツボがあります。奇穴や特殊穴の中でも四神聡や上天柱・上風池・上完骨は頭周辺の症状に対して経験的に古くから使用されてきました。
四神聡(ししんそう)
百会の周囲にとるツボですが、文献によっては1寸や2.5寸と様々です。位置が一定ではないということで頭頂部には位置を限定できないが重要なツボが存在するということを示しています。
四神聡とは、百会穴の前後左右にそれぞれ1寸のところにある経穴である。
導出静脈の位置や数は個人差があり、人によってはその場所にない場合もあります。
位置を特定せずに頭の形や状態に応じてツボの場所を変えることができるのが奇穴や特殊穴の強みと言えます。
上天柱(かみてんちゅう)・上風池(かみふうち)・上完骨(かみかんこつ)
天柱・風池・完骨は陥凹部や髪の生え際にツボの位置がありますが、上天柱・上風池・上完骨は後頭隆起の下縁にとるので、骨の際にツボの位置があります。
上天柱・上風池・上完骨とは、経外奇穴である。
このツボを知らない方も多いと思います。鍼灸の本場中国にも知られていないツボです。
日本でも昭和に入ってから使われ始めた名称ですが、臨床上では本来のツボと区別されずに使われてきた可能性があります。
頭鳴りと関連性の高い乳突導出静脈の血流改善が図れる重要なツボです。
まとめ
- 頭鳴りには過覚醒タイプと循環障害タイプが存在する。
- 過覚醒タイプは自律神経のバランスを整える。
- 循環障害タイプは奇穴や特殊穴を使用し脳の循環と高温状態を解消する。