七夕と東洋医学

七夕の起源

七夕は奈良時代に暦や医学と一緒に中国から日本に伝来しました。
中国では古来より織姫と彦星が出会う日としてロマンチックな詩が読みつがれています。

最も有名なのは白居易の七夕(ひちせき)という詩

原文
煙霄微月澹長空
銀漢秋期萬古同
幾許歡情與離恨
年年并在此宵中

意訳
薄雲に半月浮びて空淡く
天の川の逢瀬は古今変わらず
限り無き歓びと別れの辛さ
年年に併せてこの一年にあり

七夕は古来より男女の出会いの日として、また季節の区切りの節句として大切な日としてされてきました。
季節の区切りとはすなわち、次の季節に身体を調整していく時期です。
つまり養生の期間として『七夕』前後には中国各地で伝統的な養生法が提案されてきました。

七夕に食べる伝統的な食品

日本では素麺を食べる習慣がありますが、食養生ではおすすめできません。
むしろ栄養価では素麺は夏バテを引き起こしやすい食品です。
中国では七夕に東洋医学による食養生を取り入れ、松の実、柏子仁(ハクシジン)、ハスの葉などを食する習慣があります。
それぞれの効果効能としては松の実は滋潤皮膚、延年益寿。柏子仁(ハクシジン)は能養心安神、止汗潤腸。ハスの葉は清熱解暑、升発清陽、涼血止血などと考えられています。
道教では不老長寿の生薬として考えられてきました。

また中国の地方によって養生に使用される食材や材料、方法も異なっています。

福建省の七夕の養生法

仙人草、冬瓜を合わせて煮込んだスープを摂る習慣があり、これは発熱、頭痛、熱中症などに使用されています。
これは七夕の時期に身体に水が溜まることによって夏に発症する病を予防する考え方があるために暑くなる前の七夕に水分代謝を促進する食品を摂りなさいという古人の教えです。
また水が溜まることによって虫刺されが悪化してトビヒや目の病気になることから殺菌も考慮していたと考えられます。

湖南省の七夕の養生法

七夕に頭を洗う習慣がありました。「いやいや、頭って毎日洗うでしょう!?」と思う方も多いかと思いますが、日本は高温多湿の気候なのでお風呂の習慣が根付いていますが、乾燥の気候が大部分の大陸ではお風呂を入ることの習慣がない地域が多くあります。
『攸県志』という書籍には“七月七日,婦女採栢葉、桃枝,煎湯沐発”とあり、湖南省の未婚の女子は七夕の時期に柏や桃の木や葉を煮出して洗髪する習慣がありました。
洗髪することでイケメンの理想的な夫(如意郎君といいます)と出会えるという言い伝えがあったといいます。
現在の湖南省女子はもちろん毎日洗髪の習慣がありますが、柏(かしわ)と桃(もも)の枝葉を煮出すというのは意味があり、殺菌作用や余分の脂質を取り除く、また汗疹の予防になるということが経験的にわかっており、夏場の頭皮の疾病を予防していたことが現代ではわかっています。

真似したい中国の七夕の養生法

女子は五子を食す

七夕の養生法「五子」
中国では七夕は道教のお祭りでもあるので神様にお供え物を供えます。
お供え物の代表的なものに『五子』があり、五子とは桂円、紅棗、榛子、花生、瓜子のこと。
桂円は竜眼肉と呼ばれる生薬で血を補う、精神安定に用いられますがライチに似た果物で甘みがあって美味しいですよ。紅棗はナツメで滋養強壮に薬膳でも欠かすことのできない生薬、食材ですね。榛子は漢方ではシンシと呼びますが、ヘーゼルナッツと聞くとわかると思います。漢方では胃腸の不調や肺の疾患である咳喘息などに使用されてきました。花生はピーナッツのことで、漢方では主に出血性の疾患によく使用されています。瓜子とは冬瓜の種のことで、薬としては歴史が古く2,000年以上も虫垂炎の炎症を止める薬として重宝されてきました。
女子は七夕にお供えの『五子』を食することであらゆる病を予防しようという習慣があります。日本では手に入らない食材ばかりなので、根付かなかったのは無理ないのですが、薬効が高い『五子』のことを知るとぜひ七夕に食べてみたいと思いませんか?

台湾ではザクロと七夕は切っても切り離せない。

中国の宋の時代に湖南省一帯で寄生虫による病が猛威を奮った記録が残っており、当時の医師である呉夲(ゴトウ)が『七夕』の時期に使君子とザクロを民衆に食べさせて寄生虫を治療したという伝説があります。
呉夲は死後、保生大帝(ほせいたいてい)として、現在でも台湾で道教の神様として大切に祀られています。
衛生状況が良くなる前は漢方薬の大部分は虫下しとして使用されていました。その中でも使君子とザクロは小児でも安全に服用できるものとして、多用されており数多くの文献に記録が残されています。
衛生環境が整った現代では縁のないものとなりましたが、七夕の風習として台湾で残っているのは面白いですね。

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